バイデン大統領就任演説に思う
先月20日アメリカ第46代バイデン大統領の就任式がありました。この日の就任演説(The Inaugural Adress)を英語で何度か聴き、原文も読みました。
まず、第1の感想は、日本の菅総理大臣の所信表明演説との落差です。重要な言葉は繰り返し、大きな声で言うところと、小さな声でいうところのメリハリ、また勿論原稿はあるのでしょうが、決してそれを読んでいるように思わせず、聴衆、国民に語りかけるスタイル。まさにスピーチなのですね。
高校3年のときに英語のおじいちゃん先生が教材として、キング牧師の有名な「I have a dream 」 のスピーチをテープレコーダーで流して授業をしたことを覚えています。重要なことを言った後に間を開ける、そこに聴衆の歓声が入るのですね。バイデン大統領の演説はまさにそのスタイルなのです。ちなみに、女性初のカマラ・ハリス副大統領の昨年11月7日の勝利演説はその後のバイデン氏の勝利演説よりも落ち着きがあり、その内容も大変素晴らしかったです。
この就任演説で、バイデン大統領は、「団結(unity)」を強調しましたが、私の印象に残った部分は、氏の母親の言葉を引用した「人の立場になって考える(stand in their shoes)」という言葉です。
現在も既に退任した前トランプ大統領の1月6日の暴動扇動とも言える行動を理由に昨年の弾劾に続き、史上初の2度目の弾劾裁判が進行中です。ただ一方で根強いトランプ支持者がアメリカには数多く、バイデン大統領はこのトランプ支持者に対しても、この演説で「私を支持しなかった人々のためにも全力で闘う(And I promise you I will fight as hard for those who did not support me as for those who did.」と述べています。
選挙では多数派が勝者ですが、それはある価値が絶対的なものではなく、多数派もいつか少数派にもなりうる。そのとき多数派は、少数派をどのように処遇するのか。バイデン大統領はこの演説のなかで「人の立場になって考える」「私を支持しなかった人々のためにも全力で闘う」というわけですね。素晴らしいです。いつかまた自分達も少数者になるかもしれないのですから。
また、ハリス副大統領の11月の勝利演説の冒頭部分でも、昨年亡くなったジョン・ルイス議員の言葉「民主主義は状態でなく行動である(Democracy is not a state. It is an act.)」を引用し、「アメリカの民主主義は保証されているものではなく、勝ち取るものだ(America’s democracy is not guaranteed.It is only as strong as our willingness to fight for it, )」とスピーチしています。
いずれにせよ、4年前トランプを選んだのもアメリカ国民であり、また今回バイデンを選んだのもアメリカ国民です。今後も民主主義のあり方を勉強する意味でも今後のアメリカの政治に注目したいものです。